籠の鳥





しばらく走りつづけてやつはは森を抜けた。

「ケッ…普通に抜けられたじゃねぇか」

そう呟きながら息を整えるついでに周りの様子を伺いながら歩いた。

殺風景な場所に変に不気味な庭、その奥に大きな石造りの館がそびえ立っていた。

「この時代にこんな石造り…なのに古臭いっつうのはどういうことだ」

館に近付いていくと、突然1人の男が物陰から出てきた。

槍を構えて身構える。

だが、男は動く気配を見せなかった。

「やらねぇのか?」

「他の客に手は出せない」

「はぁ?ああ、そうかい。後悔しても知らねーからな」

そう言って警戒しながら男の横を通った。



通り過ぎて警戒を解き、早歩きで中に入って行った。

「………愚かな」

その男の呟きはもうやつはには届いておらず、強い風がさらって行った。


槍を掴んだまま周りを見回した。

大きな崩れた館の石があちこちに積み重なっている。