籠の鳥

そして信じたくないものを見た。

無意識に足を止める。



どうやら妖怪はやることを終えてどこかへ行ってしまったようだ。



男の子は"その"隣に膝をついた。

震える手を伸ばす。



『あ………あ、くら…』

その腕に抱き寄せて顔を見る。

目を開けたまま、冷たく眠っていた。

着物も赤い血で染まっている。



俺はずっとあくらの名前を呼んだ。

帰ってこないことなんか分かってる。

ただ許せなかった。

守られてばっかりで何一つ守れない自分が…

妹も村もいじめられる生活も、全てなくなった。


失った………

俺が弱いから……


ずっと嘆き謝った。

死ぬまで、声が出なくなるまで……



そしてそれから、壊れた人形の中身を鴉がつついていた。