最後の天使




「料金、先ほどお預かりしてた分のお釣りになります」


「すいません。色々、ご迷惑かけました」


「いえいえ、それではおやすみなさいませ」


丁寧な口調で
目じりのしわをつくり、

タクシーの運転手さんは
走り去って行った。



「俺の家の鍵、渡しとくな」


俺は、
キーケースに2つついていた、
うちの1つを山本に渡した。


1つは俺が

もう1つは山本が

そしてもう一つは、
美紀が。


3つあるカギは、
もう手元には1つしか残らなくなっていた。



「俺の部屋、ここの706だからな」


「はい」


俺は、
家をさっきの
鍵で開けた。



「めっちゃ広くて、かたずいてますね…男の人の部屋ってカンジ」


「そうかあ?」


俺の部屋は
モノクロでまとめられている。
原色はもちろん
パステルカラーも、
派手な色は嫌いだ。


「なんか飲む?…ってあんまないけど」


俺は冷蔵庫を見ながら、
飲み物を探した。