「あ゛ー、暑いー。溶けてまうー」

さんさんと降り注ぐ日差しは
柔らかさ半分眩しさ半分。

そんな日差しの直接当たる
窓際の席に突っ伏す男子生徒が
呟きを漏らす。

「今日の気温は２８℃だって」

「２８℃！？　まだ７月入ったばっかだよ！？」

「今年は、気温の上下の差が激しいって天気予報で言ってたよ。それより、リュウ君大丈夫？」

彼の言葉に反応するのは３人の少年少女。

本を持ったメガネの少年が情報を提示し、
下敷きをうちわ代わりにパタパタと扇ぐショートヘアの少女が驚きを示す。

そしてゆるくウェーブしたロングへアの気弱そうな少女が
ショートヘアの少女に新たな情報を話しつつ、机に突っ伏す少年、竜汰を気遣う。

「今のハルちゃんの御言葉でこの綾原竜汰、暑さに打ち勝つクールさを取得いたしました！」

そんな台詞を吐きながら竜汰はがばっと上半身を跳ね上げ、
ロングヘアの少女、小春を見つめた。

教室のいたる所からヒューヒューと口笛が聞こえ、

「ハル、リョウの毒牙からあたしが守ってあげるから！」

ショートヘアの少女、柚子葉が小春を抱き寄せる。

小さなため息とともにやれやれと言った様子で
メガネの少年、清一郎が手を額にあてる。


そこには剣呑な雰囲気などはなく、ほのぼのとした田舎の空気が詰まっていた。