「やめ、何度言えばいいの?何度言えば貴方のその脳に届くの?」 憎たらしくそう呟いて、「今日はお終い」だと玄関へと向かった。 お母さんは朝早く仕事に出かけていていない。 結城は、お母さんの前だととてもいい人そうに振舞う。 だから、嫌い。 本性を現さない、ずるい女。 お兄ちゃんは、ケースにヴァイオリンを収めた。 切なそうな顔をして・・。 と、私の視線に気づいてかお兄ちゃんは私へと顔を向けた。 合った目と目。 私がなんと言おうか、戸惑っていると微かに笑い声が聞こえた。