私は何もいえず、ただただ黙ってみていた。
「それは、気持ちの問題でしょ?どうにかなんて出来ないよ」
「でも・・」
実の遮るような声を、茉莉は気にせず喋り続けた。
「もし、玲衣が実より先に告白してても、隆太くんは実が好きなんだから同じじゃん」
「実と玲衣だけの問題じゃないと思うんだ、あたしは」
そういって茉莉は、儚く笑った。
その笑顔が実の瞳をゆらした。
「泣いてばっかだね、あたし」
そういった実の瞳からは、じわじわと涙の粒が浮かび上がっていた。
「恐いんだ、私。玲衣をなくすのも、隆太をなくすのも。すごく、すごく恐い」
私も、たまに恐くなる。
翔をなくすのが。

