竹之内はメガネを上げ、不機嫌そうに言った。


「…何で増えてる訳」


「皆でやった方が楽しいじゃないですか」


そう言うと、じとりと睨まれる。

「…はぁ」

あたしとの睨み合いの末に、先に視線を逸らしたのは、竹之内だった。

「どこがどう分かんないの」

抑揚の全く無い、冷たい声に、隣であたしと竹之内のやり取りを楽しそうに見ていた谷内と、数学を解いていた木月がフリーズした。

「ぶ…文法?」

「…は分かってるよ。どの辺?活用の見分け方から?」

「…………全部」

「…オッケー」

何時もの紙をショルダーバッグに詰めて、竹之内は木月の隣に座る。

「…ここ、分かる」

「………未然、連用、終止、連体、仮定…」

「これ古典だから仮定が已然になるの」

「…ああ」

そんなやり取りを見ていると、不意に、竹之内と目が合う。

(お前も早くやれ)

と目で言われ、慌ててプリントに視線を落とした。