[木月]

「あれ、真朱、新聞部は?」

「あー…今日は休んだ」

カラリと持っていた矢を置いて、真朱は笑っていた。
その目元が僅かに腫れているのが気になり、顔を覗き込む。

「…大丈夫か?」

「え……あ、うん…なんで?」

「ちょっと赤くなってるから」

「ほ、本当?あーちょっと、鏡見てくるね」

へらり、と笑った真朱は、校舎に戻って行った。

俺から顔を背けた瞬間に、弓道場の窓ガラスに、苦しそうな顔の真朱が映ったのに、俺は何も出来なかった。