「白雪さん、お電話です」
硬くなった白雪の部下の声で、辺りは静寂に包まれた。
「…誰か分かる?」
「いえ…人質がどうだとか言っておりましたのでーーーー」
「貸して」
手渡された保留中の携帯に何やら機械を取り付けた。
その場にいる幹部と、幹部補佐が耳に手をやった。
白雪は俺にイヤホンの方なものを渡し、耳に付ける様に言った。
テレビの中継なんかでよく見る物だ。
電話が聞こえると言う物だろうか。
「…お電話代わりました」
白雪の声がイヤホンからした。
『その声は筆頭幹部殿だねえ。話せて光栄だよ、岡田さん』
ボイスチェンジャーを使っているのか、モザイクが掛かった様に声が歪んでいた。
「…何か、用件が?」
『今夜八時、土器北中学で待ってるよ』
肉声で無くても、相手が楽しんでいる事がよく分かった。
「嫌だと言ったら?」
『女の子が一人死ぬ。それとお前らの密輸ルートが二、三本摘発されるかな』
「…分かった」
『てめえは体育館、竹之内だかは校舎内に1人で来いよ』
なあ、竹之内。
別に寂しかったら皆で来ても良いぜ?
ただ女の子は死ぬけどなあ?
無意識に拳をキツく握っていた。
皆の表情が硬くなる。
こうして大勢で聞いているのを分かってる様な口調だ。
『それと、メルクーリオ』
…誰だ、それは。
周りを見ると、その場の俺以外の全員が、
『松葉丁子』を見ていた。


