[竹之内]
日が沈んだ頃、坂本が何処か緊張した面持ちで車に乗り込んだ。
例の歓楽街の人を引き取りに行くらしい。
「…無事に帰ってこれたら良いんだけどな」
走り去る車を見送った松葉が、煙草を咥え、目を細めた。
「寺田か?」
隣の加藤が聞く。
「ああ、…ホントに面倒な相手と恋に落ちてくれたよ、茜は」
「お前が変な事吹き込まなきゃ良かったんじゃねえの」
後ろで黒鳶がぼそりと言う。
「あ、そこ突っ込む?俺だってまさか…ねえ?」
「同性愛?マジキモい、寄るんじゃねえ、って言ってたのにねえ…」
白頭の若き筆頭幹部、岡田白雪(オカダシラユキ)もしみじみと呟いた。
個人が好き勝手に思い思いの事を喋りながら、部屋に戻って行く。
これが日常。
少しずつ、此処の生活に慣れ始めていた。


