「…ごめん」 在り来たりの言葉しかかけられない自分の語彙力が憎い。 マルテがこっちを向いて、笑った。 「謝る、ない」 「…痛かったでしょ」 「?」 伝わらなかったらしい。 あたしはそっと傷のあった辺りを撫でた。 マルテは少し目を見開いた後、また笑って、あたしの頭を撫でた。 「傷、大丈夫。良い子、マソオ」 見えない傷は、誰も知らないし、疑わない。 いつか何かで見た言葉が不意に浮かんだ。