──その夜、ベリルは庭に出て星空を見上げていた。
レンジャーとしての才能も併せ持つ彼は、こうしてよく大気を探る。
その肌で予兆と予感を感じ取るために目を閉じた。
ベリルは己の存在を良しとは思っていない。
だが自分を造り出した科学者たちと、命を賭(と)して逃がしてくれた人たちのために自ら死を求める事はなかった。
研究施設の中でも、ベリルの正体を知っている者はごくわずかだった。
専門知識を教授していた学者たちは「天才少年」だと国から聞かされていたからだ。
ベリル・レジデントという名は科学者たちが付けた名前だ。
ベリルとは緑柱石から作られる宝石の総称。
そして、緑は悪魔の色とされる。



