それでも、憎むことなんて出来なかった。

 だって、それまでは本当に愛してくれていたから。

 ふと、肩をポンと叩かれて振り返るとベリルがそこにいた。

 いつものように無表情だがその瞳に険しさも冷たさもなく、何も言わずに優しく背中を叩き、片付けを手伝うためキッチンに消えていく。

 たったこれだけの事がダグラスには嬉しかった。

 見ていないようで、いつも側にいてくれる。

 ベリルの優しさがいつも心を軽くしてくれていた。

 自分一人だったらどうなっていただろう。

 そう思うと、とても怖い。

「──っ」

 ダグラスは、涙がこぼれ落ちそうなのをぐっとこらえてオレンジムースをかきこんだ。