──夕食を楽しんだあと、ミーナは人数分のオレンジムースをリビングテーブルに並べた。
ダグラスはそれを一つ手に取り、ミーナたち家族の背後に回って壁に背中を預ける。
テレビを見ながら笑い合う家族団らんの風景はダグラスの胸に少しの痛みを与えた。
自分にもそんな過去があったと、遠い記憶をたぐるように目を眇めた。
まだ父さんが自分を血のつながった子どもだと思っていたとき、そこには確かに愛があった。
その手の温もりを今でも覚えている。
両親の笑顔も鮮明に記憶の中にある。
笑顔で囲む食卓、優しい父と母の笑顔……。
しかし、それはもう戻ってこない。
愛されていると信じていた自分に向けられた殺意があまり深く、強く激しくて愕然とした。



