「オレンジムース?」

 読んでいた雑誌から目を離したベリルは、唐突に声をかけたダグラスを見上げて眉を寄せる。

「うん、ミーナが教えてほしいって」

 どういったいきさつで料理の話になったのだ?

 その経緯が気にはなるがと笑顔のダグラスにいぶかしげな表情を浮かべた。

 頼みを断る理由もない、ベリルは小さく溜息を吐きながら立ち上がる。

 キッチンでは、テーブルの上にひと通りのものが揃えられていた。

 ベリルはそれらを見回す。

「コアントローは」

「あ! ──っと、これ!」

 ミーナは慌てて棚から取り出した。

 コアントローとは、フランス産のリキュールの一つだ。

 ムースにではなく、上に乗せるオレンジゼリーに使う。