「今は戦闘中だ。気を抜くな」

「は、はい」

 ベリルはライフルを手に持ったダグラスを一瞥し、負傷した仲間に目を移す。

「ダグラス」

「はい」

「ジャンを連れて下がれ」

「え?」

 足に怪我を負ったジャンを仲間が必死に引きずっているが、一人では大変そうだ。

 あれでは狙い撃ちされてしまう。

「解った」

 ライフルを肩にかけ、仲間と共にジャンを運ぶ。

 苦笑いを見せるジャンの青い瞳には複雑な表情が浮かんでいた。

「すまない」

 それは怪我をしてしまったことへの自責の念なのか、自分を助けることで戦力が減ることへの感情なのかは解らない。

 きっと両方なんだろう。

 怪我をしたかった訳じゃないし、痛い思いをしているジャンを誰が責めたりするものか。