「違う?」

 聞き返したスーザンに目を向けず、ペットボトルを傾けたあと続けた。

「確かに父親代わりにはなってくれてるけど、独占はだめでしょ。ベリルはそういう立場の人だよ」

「みんな、彼が好きなのね」

 苦笑いで応えたダグラスに柔らかに微笑んだ。

 ダグラスはその表情にドキリとし、大人の女性がかもしだす色気に目眩(めまい)がした。

「敵も多いらしいけどね」

 照れ隠しで肩をすくめる。

 確かにベリルの優しさは偽善だと嫌う者も多いが、思いは人それぞれだ。

 そういう連中も要請を受ければちゃんと仕事をこなす。

 公私混同は自らの命も危険に晒す事になるのだから。

「子どもを誘惑するのはやめてくれんかね」

 二人が声の方に振り向くと、車内から顔を出し呆れたように目を据わらせているベリルがこちらを見ていた。