彼らが欲しいのは、いかに相手を素早く殺めるかであって、誰かを救うためのものじゃない。

 いや、仲間を救うためのものだと言うかもしれない。

 果たして、データ化されたベリルは誰かを殺め、誰かを救えるのだろうか?

 データ化が成された事がないから結果はわからないけれど、ベリル本人と同じように何かを成せるとは思えない。

 ──ダグラスはそんな事を考えながら、ヘッドセットの調整を続けていた。

 三十分後、

「はぁ~、やっと終った」

 ダグラスは十個ずつに小分けにしたヘッドセットを隣のシートに置き、車から出て疲れたようにあくびをし体を伸ばした。

「お疲れさん」

 先に作業を終えていたベリルが笑って炭酸飲料を差し出す。

 それを嬉しそうに受け取り、勢いよく喉に流し込んだ。