クラウ・ソラスの輝き

 いや、そんなはずはないだろう。

 それなら毎日の鍛錬はなんなのか。

 全て他人のためだというなら、尊敬などではなく馬鹿だと罵(ののし)ってやるところだ。

 そうじゃないことくらい、ダグラスは充分に理解している。

 好意を抱く相手の女性には悪いが、そのうとさがベリルの戸惑いを垣間見せることがあり、なんとなく嬉しくもあった。

 ダグラスはそんな事を思いつつ、激しい温度差のある二人を交互に見やる。

 ふと、何かを思いついてニヤリと口の端を吊り上げた。

「父さん」

「ん?」

 心中ではそのような呼び方をされて少し驚いたベリルだが、見た目にそんな素振りはまったく無い。

「今日の晩ご飯は何?」

「サーモンのテリーヌにチキンドリアと里芋の煮付けだが」

 どうして今それを尋ねたのか解らないままに応えた。