「誰でも先の事は不安だ」

「うん」

「それを諦めて自身が後悔しないのなら、それもいいだろう。人としての道を誤らなければ進む道は自由だ」

 落ち着いた声がハリーの心にこだまする。

 自由とひと言で言ってしまえば簡単だけれど、ともすればそれは見放された感覚をも生み出す。

「自由という言葉の重みを知る者はどれほどいるだろうか」

 少年はハッとした。

「親からの勧めであれば、そこに自身の責任は無いのかもしれない。しかし自身で決め、進むという自由にはとても大きな責任がのしかかる。人はそれを無意識に避けようとするのだろう」

「自由の──責任」

 そうだ、見放されたと感じるのは絶望だけでなく、全部自分にかかってくる恐怖も伴っているからだ。