「いや、全然」

 ハリーの皮肉が伝わっていないのか、ダグラスは軽く右手を振った。

 そんな皮肉くらいではもはやダグラスの心は動じなかった。

 そして、ハリーが子供っぽく思えてなんだか可愛くなる。

 ばつの悪そうな顔を見やり、仰向けになって空を見上げた。

「親父には殺されかけたし、おふくろも親父に殺されたし。今は傭兵の弟子してるよ」

「はい?」

 頭の後ろで腕を組み、目を丸くしたハリーに構わず続ける。

「まあ傭兵になるのは昔からの夢だったし。それは叶いそうだけどね」

「なんで傭兵なんか」

 おおよそ目指そうと思う職種じゃない。

 ダグラスは活発ではあるけれど喧嘩っ早くも血気盛んでもない。

 それが傭兵になりたいというのはハリーにはとても意外なものだった。