「大きく区切ったら危険だよ。人それぞれなんだから」

「知った風に!」

 吐き捨てて睨みつけたが、ダグラスはしれっと柔らかに微笑んだ。

 こんな笑顔を向けられては、恋愛感情や性別に関係なく言葉を詰まらせてしまう。

 あどけない幼子(おさなご)の笑顔を見ている感覚だ。

 計算してやっているのなら明らかに彼は小悪魔だとハリーは身を震わせた。

 ダグラスは間違いなく自分の容姿を充分に理解し活用している。

「何があったかは知らないけど、自分だけの感情で決めつけるのはいけないよ。客観的な視野からも考えないと」

 そんな言葉なんかで収まりがつくほど冷静でもない。

 分かり切ったような事も言われてハリーは少し苛ついた。

「あんたはいいよな。勉強も出来てスポーツ万能で。きっと親からは期待されてんだろ」

 言った瞬間スカッとしたが、その数秒後にはあからさまな皮肉だったとひやりとした。