「家でなんかあった?」

 図星らしい、睨まれた。

 吊り上がった目に殴りかかってくるのかと思いきや、プイと両膝を抱えて縮こまる。

「大人なんて嫌いだ。みんな自分勝手で」

 今にもこぼれそうな涙をこらえ、詰まる声を震えながら絞り出す。

「それは僕たちもだろ」

 振り絞った言葉もあっけなく返されてまた目を合わせる。

 丸い赤茶色の瞳が可愛くて、男であるにもかかわらず一瞬ドキリとした。

 しかしハリーは、その瞳の奥にある強い光にたじろいで視線を外す。

 どうせ不幸知らずの軽い奴だと思っていたのに、見知らぬ強さが垣間見えて何も言えなくなった。