──ハイスクールの昼休み。
「ダグラス君」
廊下を歩いていたダグラスはふいに呼び止められて振り返ると、担任のレイチェルが教科書を抱えて立っていた。
ブロンドの綺麗な髪を後ろで束ね、オリーブ色の瞳には大人の女性を物語る艶(つや)がある。
レイチェルはダグラスにゆっくりと近づき少し見上げた。
「お父さんには話した?」
「ああ、はい」
お父さんという聞き慣れない言葉に吹き出しそうになる。
「指定してくだされば行きますよって言ってました」
言った記憶はない。
どうせ断らない事を知っているダグラスは適当に応えておいた。



