クラウ・ソラスの輝き

 ベリルは料理の手を止め、やや表情を苦くする。

 親というものが存在しない私に何が出来るだろうか──私に出来る事は、ただ傍にいてやる事だけだ。

 求める手に触れるしか出来ることはない。

 今のダグラスと同じ歳だった頃を思い起こしてみる。

 そこには、おおよそ若者が悩むような事柄も、普通の人が考え込む悩みもなかった。

 仲間から聞かされる悩みも自分自身には無かった事に当時はある意味悩んでいた。

 だが、それが理解出来ない訳ではない。

 知識の上では充分に理解はしている。

 ただ、その経験が無いだけだなのだ。

 経験が無い事はベリルにとって多いに考え込まされた。

 紙面上の事だけで「理解した」などとは言えない、画面上の文字だけで全てを推し量る事は難しい。