ベリルはふと、端末が震えている事に気付き車のカーナビの前にある凹みに差し入れて通話をタップした。

 傭兵の一部には、こうした特殊な機械を使用している者も少なくはない。

 半ば道楽でそういった開発を手がけて流している会社も多いという事もある。

<ベリル! 戻ってきてくれ!>

 先ほど別れたミハエル捜査官の大声が車内に響いた。

「なんかあったの?」

 尋常ではない様子にダグラスは聞き返す。

<ニールが連れ去られた>

「えっ!?」

 ダグラスとベリルは互いに顔を見合わせ車を反転させた。

 声色からして嘘でもないらしい。

「なんで隣のニールが?」

 一体、何があったというのだろうか。少年はいぶかしげに眉を寄せた。