あの時の、命が消えゆく感覚は例えようもなく。

 息が詰まる程の孤独感と焦燥感が全身を襲い、足下からゆるゆると支配してゆく虚無感は慣れるものじゃない。

 叫びたくなる声も突いて出る事は無く、冷たくなる体を抱きしめる他に為す術が無い。

 それを経験する度に、ベリルは奥歯を強く噛みしめる。

 そんな感覚をダグラスには味わって欲しくないというのも、ベリルが彼を傭兵にしたくない理由の一つだ。

 それでも少年はベリルの背中を追いかける。

 死というものを知っているダグラスを無理に止める事など出来ない。

 しかし、その傷をさらにえぐりはしないだろうかという恐れもあった。