別に失恋という訳でもないが、どのみち実らない恋だという事は解っている。

 そういった意味では失恋ではある。

「失礼な。私にも一度くらいは──」

「あるの!?」

 ガバッと上半身を起こし身を乗り出す。

 自分から恋人を作らないベリルが失恋なんてあり得ないと思っていた少年は驚きに満ちた目で見つめた。

「どうだったかな」

 そんなダグラスに視線を向けず考えるような仕草をする。

「なんだよそれ……」

 ガックリと肩を落として再び外を眺める少年に小さく笑った。

 あれを失恋というべきなのか──ベリルはフロントガラスから見える空を視界にかすめる。