「こっ、ち!」


ジルは勢いよく立ち上がり地下室への扉の前へ立ち、俺たちを凝視した。…ように見えるけど、きっとこれがジルにとっての普通の事なんだ。


「まぁったくジルは可愛いよねえ、ジルこそ、俳優の道を志せばいいのに」

「ははん、よく解ってるな」

「…ちょっと何よ!あたしには似合わない夢だとかまた云う気!?」


鼻で笑ってはいるが、本心は違っていた。
何処までも卑屈な、俺の精神。


ジルが地下室の扉を開けると共に、紫の空間は消え去った。医務室へ通じる階段は、奈落へ続く道のように俺たちを迎えた。


「あいっかわらず薄暗いねえ此処は。錆だって酷いし、裏世界にでも通じてるの?」


シャンのいう通りだった。全く何か嬉しくてこんなボロくて危ういままにしておくのだろう。デューシイのツテの力で改装ぐらい出来るだろうに。…敢えて、頼らないのか?


「デュシイ、好き」


突然の告白だった。
なんて叶わない恋をジルはしているのか、という思考が頭を過った。そして何故このタイミングで。シャンも両手を口に当ててえええと声を発している。がその表情は呆れるくらいきゃぴきゃぴしたものだった。