「怪、我、?」


切るように拙く言葉を吐くジル。その声は小さいなんてもんじゃなく、はっきりと大きな声で俺に言葉を伝えているのだが、その様子はやはり周りの人間から見れば滑稽だろう。

原因不明な病。
それをジルは抱えていた。恐らくそれは心因的なものだろうと、ライが呟くのを俺たちは聞いた。

ジルはじっと俺を見ている。怪我と呟いたのはまた喧嘩したのと俺に訊いているのだ。


「そうなんだようジル。こいつがまたやらかしちゃってさぁ」

苦笑いを浮かべながらシャンが俺の背中を叩く。生憎だが、

「俺から仕掛けた訳じゃないぞ、向こうが勝手に…」

「まああったく人気者は辛いよねえ。適当にかわしときゃいいのにさー」

阿呆め。
適当にかわしなんか出来やしない。あいつらはいつでも本気でしかけて来やがる。俺に向かうような奴なら相討ちしてでもという馬鹿が多いだろうから。


「…ライ?」


首を傾げながら大きな声でジルは訊いた。俺たちは顔を見合せ、こくりと頷く。


「なめときゃ治るっていったんだが、こいつがうるさくてね」

「だぁからどーやってなめんのさ!もう、こんな奴だから困るよねえジル。全く手間のかかる…」


あんたが勝手についてきてるんだろうがよ、と口に出そうとしたが、寸前で辞めた。とりあえず事を早く済まさないと、こいつはいつまでも俺につきまとう。