…そもそも、


「あんたこそ、大丈夫なのかよ」

「え?なに?」

「…キリエに癒してもらわなくて」

「へ?なんでよあたし、ピンピンな健康体じゃん。ほ、ら、どっからどう、見ても!」シャンは満面の笑みを浮かべながら、くるくると俺の視界の中で回った。「ね?何で急にあたしの心配なんか…」

「あんたのその、都合の悪い事は自動的に排除する仕組みがついてる耳をな」


すたすたとシャンを横切り先を急ぐ俺。
ぼけっと突っ立ってるシャンの顔は、見なくても容易に想像できた。


「…ちょっと!それ、どういう意味さぁ!」


嗚呼、うざいうざいうざいうざい。
俺にはあんたの愛情は重すぎる。それはあんたが純粋無垢でその上馬鹿だからだ。だから変な情が移ってしまうだろうよ、ないがしろになんか出来ないってな。


だからいつも『ウザイ』のヒトコトで終わってしまう。
俺は誰も愛せないと云うのに。それでもいいよなんて、そんな表情で云わないで呉れ。

もともと俺がシャンに云おうとした言葉はこうだ。

そもそも大丈夫なのか?スターダムに上り詰めようとしてる今をときめく人気アイドルが、俺のような怠惰な椅子に座るチャンプと一緒に居ていいのかって。


またフラッシュが焚かれる。
あのパパラッチに。
俺を追い詰めるあのパパラッチに。俺をまごうことなく捉えるあのカメラに。俺に何処までもつきまとう俺自身に。


俺はシャンに嫉妬している。
その事実をフィルムに納める、俺というパパラッチ。