私がキョトンとした顔に気づいたおばさんは、にっこり笑って
「あら、心配しなくても大丈夫よぉ。面接はこれで終了!私は館長の長谷川と言います。短い間ですけど、仲良く楽しくお仕事しましょう」
と言った。
「か、館長さんなんですか?」
私が少し上擦った声で尋ねると、館長はまたにっこり笑った。
「そうなの。館長って言っても、うちは人数が少ないから、経理の事から館内の掃除まで、何でも屋さんなの。普段はそれでも何とかなってるんだけど、春休みや夏休みなんかは、そうはいかなくて。しかも、先月末で急に職員がひとり退職することになってしまって……。それで今回はアルバイトを募集することにしたの。でも、瑞希ちゃんみたいないい子が来てくれたから、もう安心ねっ」
いきなり即戦力として見込まれている空気…私は力なく、
「はぁ…」
と引きつった愛想笑いを浮かべるのがやっとだった。そんな私の不安を感じ取ってくれたのか、館長は
「心配しなくて大丈夫よ」
と微笑んだ。
「プラネタリウム助手、って言っても、機械操作は専任スタッフがいるし。瑞希ちゃんには、上映中のナレーション、掲示物の作成、館内のお掃除なんかを私と一緒にやって欲しいの」
「ナレーション?!」
思わず悲鳴のような声を出してしまった。
「大丈夫!台本は私が準備しておくから、瑞希ちゃんはそれを読むだけ!星の動きに合わせて話すところもあるから、事前に練習もするし、絶対大丈夫!心配ないから」
「はぁ…でも、私、人前で話すのはちょっと苦手で…」
「こんなに綺麗な声してるのに、何言ってるの!それに本番では場内暗くなるからお客様の顔も見えなくなっちゃうし…それなら緊張もしないし、きっとうまくいくわ」
館長の顔は笑っているけれど、その手はかなり強く私の手を握っていた。まるで逃がさないかのように…。
「その…出来ればしっかり練習してきたいんですけど…ナレーションの台本というのは…」