高校一年生の春休み。私は生まれて初めてのアルバイトをすることになった。
たまたま図書館で目にした張り紙がきっかけだった。
「プラネタリウム助手(短期、高校生可)」
時給は高くはなかったけれど、おもしろそうだと思った。星は好きだし、市立のプラネタリウム館なら、知り合いと顔を合わせることもなさそうだし、「いらっしゃいませ」と大きな声を出す必要もなさそうだ。それは、人見知りで声が小さい自分にはぴったりな仕事ではないかという気がした。
早速 張り紙に書いてある電話番号を携帯に登録し、図書館を出てから電話してみた。学校名と名前を告げ、アルバイト希望だと伝えると、明日にでも履歴書を持って面接に来て欲しいと言われた。どうやらなかなかアルバイト希望者が現れず、困っていたらしく、電話の向こうのおばさんは「履歴書って言っても、連絡先がわかればそれでいいですから。面接っていうのも、少しお話するだけだから、緊張しなくて大丈夫ですからね」と、とても愛想良く教えてくれた。
翌日、緊張しながらやっとの思いで書き上げた履歴書を片手にプラネタリウム館へ行くと、そのおばさんがにこにこと出迎えてくれた。私の履歴書を手に取って広げると、
「まぁ~綺麗な字を書くのね。お習字、習ってるの?本当に綺麗な字だわ」
と大げさなくらいに誉めてくれたので、私は照れくさくなってうつむいてしまった。
おばさんは、肩までのボブヘアが綺麗な白髪で、私のおばあちゃんと年が近いかも…という感じさえしたが、その髪を耳にかける仕草をしながら、丁寧に私の履歴書を読んでくれていた。
「はい…わかりました。じゃあ、沢口瑞希さん、明日から早速アルバイト、お願いできますか?」突然言われてびっくりした。てっきり、館長さんとか偉い方との面接をしてから正式採用、ということになると思っていたのに…。