四年生の頃には、すっかり言葉攻めが始まった。
男は皆、芽衣に「キモい」「デブ」「ブス」「ウザイ」など、次々に言葉を投げた。
エスカレートすれば、「死ねよ」とも言われた。
男だけではない。
女も同じだ。
一見、芽衣の友達のフリをして男の暴言から守ろうとしても、女は芽衣が使えるから一緒にいる、程度にしか思っていない。
芽衣はそれが分かっていても、縋ってしまっていた。
一人でも見方が欲しい。
一人でも守ってくれる人が欲しい。
そう思ってしまっていた。
しかし、五年生のある日、教室の掃除のとき。
芽衣が床を雑巾で拭いていると、後ろから田辺という男がミニホウキで「ちゃんと働けよ!」といいながら叩くのだ。
それは約半月続いた。

同じく五年生のある月、男の子と二人で図工室の掃除になったとき、掃除には先生が回って来るときが多かったけれど、先生は始めから来るから、始め来なかったらその日は来ないということになる。
そういう日は決まって同じ掃除の中島君が芽衣にちょっかいを出す。
中島君は言葉攻めではなかった。
しかし、中島君は芽衣の後ろからいきなり服の中に手を入れ、ブラの下を潜って左胸を触って来たのだ。
そのとき、中島君は言った。
「へぇ。結構デカイじゃん」
と。
芽衣は変な気持ちが生まれた。
性行為に対して生まれた初めての感情。
−気持ち悪い…−
芽衣は男の経験がないからどうしたらいいのか分からず、とりあえず手を振り払い、廊下に出た。
廊下に出てしまえば誰かが気づくから手は出せない。
しかし、ある日、いつものように後ろから服の中に手を入れられそうになり、芽衣が廊下に出ようとしたら、中島君は扉の前に立ち塞がりはこう言った。
「逃がさねぇよ?」
と。
その時芽衣はゾクッとした。
そのまま室内に逃げていった。
しかし、何かにつまずいて転んでしまった。
そのときはヤバイと思い、中島君を見たけれど、何もなかった。
そのとき先生が来た。
あぁ、良かった。
芽衣は心の底から安堵した。
あのとき、先生がいなかったらどうなっていただろうと思うと怖くなる。
ヤられることはなくとも触られるかもしれない。
そんな思いがあった。