桜の見える丘(仮)


私の腕をつかんでスタスタと歩く神谷の速さに私はついていけずに、足がもたつく。


「ちょ…速いって!」


この言葉のあと、スピードは遅くなっていき…。


次第に止まった。


「なんでこんなとこ。」


そこは…体育倉庫の裏。


確かに、木が多くて影もある。


でも、なによりも人気(ひとけ)がない。


「人気がないほうが前沢はいいと思って。人、多かったら話しにくいだろ?」


気…使ってくれたのかな…?


「そんなこと…」


…あったけど……。



「あるだろ?俺は何でも分かるんだって言ったろ?」


「そんなこと…ない…。わかってない。」


そうだよ…私のことなんかわかってない。


なんにもわかってなかったじゃん…。


そうだよ…なんにも…わかってない…。