桜の見える丘(仮)


「あぁ!美姫!!次じゃん、次!」


葵が指さす方に目をやる。


そこにはスタートラインに立つ神谷が。


周りのみんなの応援が私の耳に入らない。


それは――――――・・・


たくさんの人との少しの間からあいつと目があったから。


横目で私をみて…


『よぉーい!』


余裕の笑みを私に見せて…


バーン!


走り出したのだ。


一瞬だった…。


気付いたら…もう、神谷はゴールテープを切っていた。


ポロッ…


私の頬をなぜか水滴が濡らす。


「あれ…。なんで私泣いてるんだろう…。アハ、アハ…」


「美姫…。ほんと…恋してるんだね。大丈夫、あいつが美姫を嫌ってるとかそんな風には見えないから…ね?大丈夫。きっと、両想いになるよ!諦めなきゃ…ね?」


「諦めなかったら…両想いに…なれるの…?」


グスグス泣く私を優しく抱きしめてくれる葵。あったかい…。


「うん!なれるよ?だって、美姫が想ってるんだもん。絶対叶う。願ってるからね!」


なぜか…本当に叶うような気がした。


だって…葵が願ってくれてる…。葵がいるんだもん。