桜の見える丘(仮)


バインダーで健吾君の頭を叩いた、神谷。


「え…あ…」


私の方をちらりとも見ずに、すぐに男子軍団の中に向かっていった。


お礼も言えなかった。


「…。」


やっぱ…いきなりあんなこと言ったから…。


「美姫ちゃん。」


しゃがんでいた健吾君が立ち上がる。


「もう…葵ちゃん走るよ?」


ニコッっとかっこいいような…可愛らしいような笑顔を見せて言う。


「えぇっ!?」


すっごい勢いで振り向くと、もう葵の番が次に…。


「わっ!もう次じゃん!!!」



『位置について…。よぉーいっ!』


―――――…パァン!


音が鳴った瞬間にすぐに走りだす。


「葵―!がんばってぇえええ!」


ぐんぐん前にいる人たちを抜かしていく。


きれいなフォームでハードルを飛んでいく。


「葵…足はやぁ…。」


ダントツ一位だった。