考え込んでいる俺に杉里さんはクスリと笑うと、
「なくてもいいじゃないですか?

これから作って作って行けば」
と、言った。

「えっ…?」

作るって、何ですか?

「そのうち、嵐くんにも見つかりますよ」

そう言って、杉里さんは柔らかそうに微笑んだ。

俺は何だか照れくさくなって、空を見あげた。

何となくだけど、弥生の気持ちがわかるような気がする。

――気がついたら、好きになってたみたいな

確かに、そうかも知れない。

「ここでの生活になれましたか?」

杉里さんが聞いてきた。

「まあ…なれましたね、最初は大変でしたけど」

俺が答えた後で、この場に沈黙が流れた。