「いろいろって、何ですか?」

そう聞いた俺に、
「いろいろは、いろいろです」

杉里さんは微笑んで答えたのだった。

ごまかされたような気もするが、詮索しないことにする。

杉里さんにも、何かあったのかも知れない。

「まだまだ修業中の身ですけど、いつかは自分で和菓子屋を開いて、和菓子を作って行きたいなって思ってます」

杉里さんは何だか楽しそうだった。

「嵐くんは、何かあるんですか?」

えっ、俺?

いきなり話を振られて、俺は返答に困った。

「俺は…」

俺は、何がしたいんだろうか?

手がかりを頼りにここにきて、『居酒屋ますだ』に転がり込んで、親父と弥生に出会って…。