そう思ったけど、心の中だけで言った。

「もうすぐ、盆踊りですね」

俺は言った。

「そうですね、もうその季節ですか」

ふうっと息を吐くと、杉里さんは空を見あげた。

イケメンな人は、見あげるその仕草までイケメンだ。

俺には到底マネできない。

「僕、もう5年になるんですよね。

ここにきて、『松田堂』に弟子入りしてから」

「ああ、そうなんですか」

5年かあ…。

5年前と言えば、俺は15歳である。

受験だ受験だと言っていたわりには、友達とつるんでたっけ。

たった5年も前の出来事なのに、懐かしいなと思ってしまう自分がいた。

「その間に、いろいろありましたよ」

杉里さんの声で、現実に戻った。