その声に視線を向けると、杉里さんだった。

お使い中だったのか、彼の手にはスーパーの袋があった。

「あっ、どうも…」

「こんにちは、今日も暑いですね」

丁寧に会釈をすると、杉里さんは俺の隣に座った。

「こう暑いと、カラスもすずめも見かけませんね」

フフッと笑いながら、杉里さんは言った。

「えっと、“嵐くん”でしたよね?」

俺と目をあわせると、杉里さんが聞いてきた。

「あ、はい」

名前を知ってるんだ…。

俺は見たことはあったけど、彼と直接話をしたことはない。

だから、杉里さんが俺の名前を知っていたことに意外さを感じた。

「いつも梓さんがお世話になっています」

「いえいえ」

むしろこちらがお世話させてもらっていると言った方が正しい。