何事かと思いながら辺りを見回すと、
「あっ…」

遠くで、花火があがるのが見えた。

夜空に大輪の花が咲いている。

「あっ、そうだ。

今日は隣町で花火大会があったんだ」

思い出したように弥生が言った。

「へえ」

ヒューと夜空にあがったかと思ったら、ドーンと大輪の花が咲いた。

この物干し場から、花火がよく見える。

「キレイ…」

そう呟いた弥生の横顔は、花火に照らされていた。

花火よりもそっちの方がキレイだと思ったのは、俺の心の中だけにした。