袋を渡された理由がさっぱりと言っていいほどにわからなかった。

「何で俺なの?」

そう聞いた俺に、
「あんたは荷物持ち」

弥生は答えると、俺に袋を押しつけた。

何だよ、人使いが荒い姉貴だな。

口で言うのが怖いから心の中だけで言って、黙って袋を受け取った。

「弥生じゃん」

その声に視線を向けると、赤いエプロンがよく似合っている美人がいた。

長い黒髪を高い位置でポニーテールにしているのが特徴的だ。

「美波」

弥生が彼女――美波さんに向かって手を振った。