そう言うのは、心の中だけにすることにした。

「じゃあ、リコちゃんとアズサくんによろしく言ってね~」

トーゴに向かってヒラヒラと手を振りながら、弥生が言った。

アズサくんって、何だか女みたいな名前だな。

「ん、じゃ」

トーゴもヒラヒラと手を振り返しながら、その場を去った。

彼の姿が見えなくなると、
「誰だ、その“アズサくん”ってヤツは?」

俺は弥生に聞いた。

「リコちゃんの旦那さん」

弥生は俺の質問に答えた。

ああ、仏壇屋の店主か。

「つーか、“アズサ”って女かと思った」

そう言った俺に弥生は笑った。