「だけど、何で弟なんだ?」

彼女は一瞬驚いたと言うような顔をすると、
「あんた、いくつなの?」
と、聞いてきた。

聞かれた瞬間、俺は気づいた。

そう言えば、名前を知らない。

「名前」

「はっ?」

「だから、名前。

一緒に住むんだから、名前を教えてくれ」

彼女は納得したように首を縦に振ってうなずくと、
「弥生」
と、言った。

「あたしの名前は増田弥生(マスダヤヨイ)、年齢は23歳。

あんたは?」

「舘嵐、20歳」

「20歳なんだ」

彼女――弥生が言った。