春も嵐も

俺と親父がそんな昔に出会っていたなんて覚えていなかった。

赤ん坊だったから覚えていないのは当然かも知れないが。

「つい、俺はお前の母さんに話したんだ。

妻を亡くしたこと、会社が倒産したこと、死にたいと思っていることを全部話した。

まあ、酒が入っていたと言うことも手伝ってとは思うが。

それらを全て話した後、お前の母さんは言った。

“人生を塗り替えれるチャンスがある”って」

いつの間にか、俺は耳をふすまにくっつけていた。

親父の話がもっと聞きたいと言うように、耳をそばだてていた。

「ちょうど、お前の母さんも俺と似たような目にあっていた」