そう聞かれて、あたしは止まった。

「ピンチになった時に言えばいい話じゃん」

嵐は少し呆れた――あたしの気のせいかも知れないけど――ように言い返した。

「…好き、って言ったら?」

「えっ?」

「あたしが、嵐のことを好きって言ったら?」

うっかりしたら聞き逃してしまいそうなくらいの小さな声だった。

自然とこぼれ落ちる。

バカだな、あたし。

嵐は、あたしの弟なのに。

「弟じゃなくて、男として好きって言ったら?

身内じゃなくて、恋をしている方の好きだったら?」

もう、止まらなかった。

嵐が驚いた顔をしても、唇は勝手に動き始める。

「嵐が、好きなの…」

*゚。弥生Side。゚*END