「何よ、これ…?」

彼女は大きな目をパチパチさせた。

「俺のおふくろが亡くなる前に書いたもの、要は遺言書だ」

彼女に向かって説明する。

彼女は俺とそれ――遺言書を交互に見つめた。

さすが親子である。

顔はそんなに似てないものの、リアクションは一緒である。

そんなことを思っていたら、
「ちょっと待って、俺は君のことを知らないんだけど」

増田寛が言った。

「知らない?

自分の息子の顔を知らないなんてどう言うことなんだよ!?」

全く、一体どう言う親父だ。

かつての恋人の息子の顔を忘れるなんて、バカもエイプリールフールもいいところだ。