本来の目的を忘れるところだったことに、俺は気づいた。

俺はジーンズの後ろポケットに手を入れると、それを彼の前に差し出した。

「何だ、それは?」

「かつての恋人を忘れたんですか?」

「…えっ?」

訳がわからないと言うような顔をする彼に、俺はそれを彼に押しつけた。

押しつけられたそれを見た瞬間、彼の表情が変わった。

「舘紀子(タチノリコ)――あなた、俺のおふくろをご存知ですよね?

そこに書いてあることは全ての通りです

俺とおふくろを捨てたどうしようもない男、増田寛――あんたは俺の親父っすよ!」

彼――増田寛は、俺とそれを交互に見つめている。

「あんた、お父さんに何を渡したのよ!」

彼女が増田寛の手からそれを奪った。