春も嵐も

弥生は少しためらった後、わたあめに手を伸ばした。

「あっ」

声が出たのも無理はない。

俺の指と弥生の指が触れてしまったのだから。

「…ごめん」

それが何だか申し訳なくて、俺は思わず弥生に謝っていた。

たかが指が触れたくらいなのに、それが何だかいかがわしかった。

そもそも、弥生は俺の姉貴じゃないか。

「別にいいよ…」

弥生が呟いているような小さな声で言ったかと思ったら、わたあめを手に持った。

「わたあめなんて久しぶり」

少しだけはにかんだように笑った後、弥生はわたあめを口にした。